不登校の方へ

「子供が学校に行かない。勉強を見てやってくれないか」ある日の夜、知人から電話がかかってきました。

当時の私は京都にある大学の学生で、日々の勉強とアルバイトに手一杯、そんな中の突然の電話に戸惑いましたが、
恐らく私の経歴を知っての電話であろう事はすぐにわかりました。

当教室の代表・トウノは元引きこもり・不登校児です。
(詳しく知りたい方は代表についての項目をご覧ください)

「私は学校に行ってなかったんだぞ? 何を考えてるんだ」と思いましたが、
即答で断るとせっかく電話くれたのに申し訳ない、
「体験授業」と言う名目でお家に伺いました。
玄関をくぐると、両親と、その隣でうつむく男の子がいました。小柄で色白で、元気がなく、何かに怯えているようでした。
授業を始めると、彼の学力はアルファベットがかろうじて理解できる程度で、小学校卒業程度の学力もない事であろうことがわかりました。出会ってから一度も目も合わせてくれず、ずっと下を向いています。
「僕アホだから」と何度も言います。解答を間違えたり、問題の意味がわからなかったりすると自分が馬鹿にされているとか、怒られるのではないかと思っているようでした。
「この子は私だ」と思いました。
その日、私は家の方々に授業を受け持たせてくれるようお願いしました。

私はその子に「君を見て笑う人、馬鹿にする人もいるかもしれない」と言いました。
勉強ができず、気も弱く、腕力もない、そんな子供が学校でどんな生活を送ってきたかわかりますか?
人には決して言えない屈辱を経験しなければなりません。
繰り返しますが、私も引きこもりでした。悲しみと絶望を知っています。
「私は君を馬鹿にしたり笑ったりは絶対にしない。だって私もそうだったから」そう伝えると、彼は少しだけ顔をあげてくれた気がしました。

毎週話し合い、勉強のスケジュールを組み、毎日、自習を繰り返し、着実に実力をつけていく。弱々しい目つきに、力強い光が宿っていくのがわかりました。
数年後、男の子は大学に進学しました。自信なさげにうつむく小さな男の子はもういません。春の暖かな気候の中、祝勝会で日本酒をたくさん飲んでしまっていたこともありますが、私はとめどなく流れる涙を止めることができませんでした。

私は不登校を治す事はできません。引きこもりも治せません。
ただ、子供が家から一歩外に出る、その小さなきっかけを作る事はできると思っています。